そう、G君は確かに昨日の夕方バイトの帰りにあの女性が夕涼みをしているのを
目撃しているのだ。。
昨日、この女性を見た事を大家さんに告げると笑って相手にしてくれない。。
(どっちみち、こんな古いアパート前々から出るつもりだった)G君は意を決して大家さんへ言った。。
「大家さん、僕このアパートを出ます。。」
さすがの大家さんも昨日人が亡くなった部屋がでて、更にG君が部屋を退去する事で風評を恐れたのか。。
「あいや~、Gさんよ~、そんな冷たい事言わないでぇ~・・・・。わかった、よし、じゃあこうしよう。。」
「Gさん、あんたの家賃、一万円でいいさ~。。当分一万円で貸すから、そのまま住みなさい。。」
ここは貧乏フリーターのG君、破格の一万円という金額に釣られ退去するのを思い止まってしまった。。
でもその日はさすがのG君も気味悪いから、友人の家へ行きそこで泊まる事にしたそうな。。
慣れるまでの2~3日は夕方アパートへ戻り、夜は友人の家へ宿泊する日が続いたらしい。。
そんな、こんなですっかり、あのアパートの出来事も忘れつつある日、G君は久しぶりに仲間達と飲みに行く事になる。。
友人達との楽しい会話もはずみ、酔いもまわっていたG君はその日の夜中、自分のアパートに帰って
いった。。
だいぶ酔っぱらっていたから、自分の部屋に着くと朝までぐっすりと寝入ってしまったG君。。
朝、目が覚めると自分がアパートに戻ってるのに気づいた。。
「な~んだ、恐がって損した。大丈夫さ~。。」
その日は休みだった為、G君は窓を開け久しぶりに部屋を掃除した。。
太陽の光がまぶしい。。今までの暗いイメージを払拭するような青空だ。。
窓から横を眺めると、あの女性の部屋が見える。。カーテンも無い閑散とした部屋。。
「しかし、お陰で家賃が一万円になったからラッキーかもしれんな~」G君は不謹慎にも、そう思いつつ家賃が浮いた事を喜んでいた。。
それから数ヶ月、何も変わらない普通の日々が続いた。。
でも隣の部屋だけは何時までも借りてがつかずにそのままだった。。
夏が過ぎ夕暮れ時も深まる秋の季節を迎えようとしていた。。
ある日の夜、バイトを終えてビールとつまみを買ってテレビを見ながら部屋でくつろいでいた。。
バイトの疲れもあったせいかG君そのまま寝入ってしまった。。。
何時間たったであろうか、ちょっと寒気がして目が覚めた。テレビはお決まりの砂の嵐。。
テレビのスイッチを消し、時計を見ると夜中の3時前、トイレに行きもう一度寝ようかと思ったその時。。
コツ・・コツ・・と廊下を歩く足音が聞こえる。。
そしてその足音はG君の隣の、あの女性の部屋で止まった。。
そしてバタンとドアの閉める音が聞こえた。。
ぶるぶるぶるとG君は体の震えがとまらない。。
やがて、何か歌が聞こえてくる。。
ぎょえ~~~~
山口百恵の曲だ~~~~~~
もう、その夜は頭から毛布をかぶり、耳を押さえて、がたがた震えながら夜を過ごしたそうな。。
いつの間にか寝入ってしまい、朝になったので早速隣の部屋を覗きにいったG君。。
窓から中を見るとガランとしていて人気も無い。。
鍵もかかっている。。
でも確かに足音が聞こえた。。ドアの音も。。
そしてあの山口百恵の曲も。。
早速その日、G君は大家さんへ部屋を退去する事を告げてアパートを引き払った。。
それから22年の歳月が過ぎ。。
G君も家庭を持つ中年サラリーマンとなったある日。。
仕事で昔、住んでいた、そのアパートの近くを通った。。
昔の思い出が走馬燈のごとく蘇り、G君は2階の自分の住んでいた部屋へ行ってみた。。
自分の住んでいた部屋。。懐かしい感じがした。。
そしてあの女性が住んでいた部屋の前へ行き、ドアをみると落書きのような字が・・・・
【おかあさん、ごめんなさい。】と書かれている。。
どういった意味の落書きか、わからないがG君は何か気味悪くなって、その場所を後にした。。
【解 説】
この話の主人公、G君とは、紛れもなくgenさんである。
彼も今や立派なサラリーマンとなり、家庭を持ち日々ブログにのめり込む毎日である。
彼が遠い昔に経験した事であるが、genさんはお酒を飲んで酔っぱらうたびに、この話を口にする。
私も最初の頃は全然信じなかったが彼が何度もしつこく同じ話しをするので、今回公開してみた。
しらふの時聞いても、一言一句同じ事を言う彼の話しぶりに私も心を動かされたからだ。
その時に聞こえた足音、ドアーの音、などを彼は鮮明に覚えているそうだ。。
そして歌が山口百恵という所が時代を感じさせる。。
今や、山口百恵を知らない世代も多い中でこのような話ができるのは幸いである。。
夏のお盆の季節になると、今も昔もこのような怖い話で盛り上がるのではないだろうか。。
きょえ~\(゚∀゚)/なんか小説みたいになったけど。。